点と線A

2018年10月

■ 長さと太さ

線に幅はないという話は、これは数学の教科書に出てくるような線にとどまらず、線の本質を捉えています。

太い線、細い線と、幅によって線を区別することもあります。それにもかかわらず、線に幅はないというのです。

まっすぐな線、曲がった線、いろいろな線があります。点線、破線、一点鎖線もあります。二重線もあります。

線をいろいろ集めて、では、いったい線とはどういう性質か、それは、点と点とを結ぶ、その長さです。 これが線の本質です。

そう考えて、古代ギリシアの人たちは、本質的ではない性質をおざなりにしてみました。

その1つが太さであります。線には幅があります。誰がどう見てもある幅を、いったん奪うことによって、ずいぶん見通しがよくなるのです。

■ 始点と終点

ExcelとかWordとかPower Pointとか、Office系のアプリでは、図形を挿入できます。図形の1つに線があります。

線を挿入すると、始点と終点の位置が認識されます。折れ線ならば折れ曲がり点の位置、曲線ならば曲がり点の位置と曲がり具合が記録されます。

線を画面に表示するとき、幅はないものとして、それらの点の位置情報は計算されます。 幅のない線をまず描いて、その線の上に、太さ、形状、色や影などの情報を加味して表示しているのです。

幅を大事にしていると、線を描くプログラムは複雑になったでしょう。

幅がなければ、太いも細いもありません。点線と鎖線の区別もつきません。目に付くものをどうしても前提としてしまいます。

しかし、それよりも優先すべきものがあったのです。2000年も前に生きた人たちが、線から幅を除いてくれた恩恵がここに生きています。

■ 現象と本質

例えば、10パターンの処理をする情報システムを構築しようとします。

A方式ならば8パターンをカバーしているので、2パターンだけ個別に例外対応する。B方式ならば3パターンしかカバーせず、残りはそれぞれに異なる対応をしなければならない。こういうケースはA方式を選びます。

けれども、そんなに分かりやすいケースばかりではありません。そもそもA方式とB方式の二者択一でもありません。

目に見える10パターンそれぞれの現象に捕らわれず、本質を捕まえようとすることが、近道になります。

本質的ではないものを除くには試行錯誤があります。前提を疑ってみます。ひらめきも大切です。

線の太さや形状といった見た目に目をつむって、長さを中心に据えるような捉え方が思い浮かんだとき、10パターンのすべてをカバーするC方式が見つかるかもしれません。

■ 前回と今回

昭和30年代に『点と線』という小説が発表されました。映画化され、テレビドラマにもなりました。

福岡県の海岸で心中と見られる男女の遺体が見つかりました。地方のベテラン刑事は1枚のレシートを手にして事件性を疑い、警視庁の気鋭の若手は西へ、そして北へ。点と点とが線でつながり、犯人のトリックに迫ります。

東京駅のプラットフォームに現れる空白の4分間。それは偶然か、必然なのか。疑い、そしてひらめきます。時刻表に羅列された駅と時刻の点と点とを線で結んで、ダイヤグラムが現れます。仮説はしかし検証されては消えていきます。

情報システムの構築というのも、点と点とを線でつなげる作業のように思えます。データとデータ、機能と機能、データと機能をつないでいきます。

データと機能の本質を、見間違えてはいけません。線にとっては、太さも形状も彩りもその本質ではなかったことを、思い出さずにおれません。

点と線と、情報システムはどうつながるのか、前回の宿題は今回の提出ということで、この話はこれで終わりです。